平野氏が半世紀かけて7000冊以上手がけた装丁作品の中から晶文社の装丁本を中心に約600冊を展示。ギャラリー内壁面の本棚と床面の展示台に装丁シリーズ毎に纏めて配置する事により、あたかも古書店であるかのように来場者が装丁本を手に取れる展示とした。また2017年台湾台中市での展覧作品の描き文字と氏のもうひとつの活動である舞台やコンサートのちらしやポスターを手直しし、作品上にメモを書きつけ和紙に出力した作品80 点も壁面に掲示。キャブションには晶文社創業当時のエピソードなども記され、本と出版と時代と装丁家の蜜月関係に思いを馳せられる展示となった。
ID
ddd_214
展覧会名
平野甲賀と晶文社展
開催期間
2017年09月04日–2017年10月24日
展覧会タイプ
dddからgggへの巡回展
会場
ddd太秦 (京都)
作家・団体
ポスターデザイン
2017年10月24日
鳥海修による「鳥海修の勝手に評論」
京都dddギャラリー- ツアーガイド: 鳥海 修
平野氏と親交がある烏海氏によるギャラリーツアー。展示された本を例に平野氏はタイトルに3つの明朝書体しか使わない、太さの違う書体を使う、やたら字を詰める等の特色を紹介。また壁面ポスターを個々に取り上げ、初の描き文字は「父」、チャベック作品を例に表面的には能天気だがパックボーンが深い、一文字ー文字は有り得ないが全体として纏まっている、優れたデッサン力が表紙でタイトルを感情にまで伝える、とその甲賀ファンぷりを披露。描き文字データを「コウガグロテスク」として販売したが本人は誰も他人は使いこなせないと思っていた、頭デッカチの文字は「禿頭体」と言ってカワイサを追求等々、ここだけのエピソードを次々に披露。30 年以上の晶文社時代、タイポグラフィやデザインを杉浦康平や粟津潔から勉強したが、結局彼らには嵌まらす自分の様式を作り上げた時代だったと締めた。
2017年09月04日
ギャラリートーク
京都dddギャラリー評論家で小説家の京都市出身の黒川氏と平野氏のトーク。二人の関係は、黒川氏が平野氏装丁の鶴見俊輔氏の「思想の科学」の編集に加わった時からで既に30 年以上。黒川氏によると一般的には出版の編渠と装丁、演劇の役者と舞台装置は緊張関係にあるが、平野氏はそれを飛び越えた共同作業者であると言う。平野氏は自分でそうせざるをえずにやってきたし、仲間に支えられてきたのだと振り返る。また平野氏は今も過去の作品を手直しし続けるのはなぜかとの問いかけに、今、やっていることが一番面白いと応え、日本語の美しさに幸せを感じると言う。文字とは概念を表すだけでなく、形にも意味があり、繰り返していると違う着眼点や再発見があるとの事。さらに会場の作品を例に何を感じて作ったかを解説。最後に黒川氏が平野氏世代は生きている限りはずっとやる、「そうだ、まだこの先があるぞ!」というパイタリティに満ち溢れていると語って終わった。
会場写真
展示記録・撮影: 吉田 亮人