矢萩が手掛けた500冊超の本を時系列に手にとれる様に展示。装丁のラフ案も展示しデザインの工程を解説。インドの出版社タラブックスとの仕事、「ちいさくつくり、ちいさく届ける」為、自ら立ち上げたリトルプレスAmbooks、「人間はなぜ本をつくるのか」のテーマで、小学生の子どもたちと取り組んだ本づくりワークショップ、国内外の紙づくりの現場を訪ねる旅など、彼のこれまでの大小のプロジェクトについても紹介。 2019年9月、学びの杜ののいちカレードへ巡回。
ID
ddd_220
展覧会名
本の縁側 矢萩多聞と本づくり
開催期間
2019年03月30日–2019年06月19日
展覧会タイプ
ddd企画展
会場
ddd太秦 (京都)
作家・団体
ポスターデザイン
2019年03月30日
ギャラリートーク&ギャラリーツアー
京都dddギャラリー互いに兄弟の様に似ていると認める二人。寄藤氏のラジオ番組で話して依頼の付き合い。本展の開幕時は未完成で後からコンテンツを追加。数年前、寄藤氏のgggの展覧会も同様。矢萩氏の“成長”を感じた。寄藤氏は、かつては「16時間の壁」を超えるべく17時間以上連続で働いた。渋谷スクランブル交差点でスナイパーの狙撃をのたうつダンスで回避するデザインゴルゴの寓話は秀逸。一方、矢萩氏の理想は、インド生活の影響もあり、なまけつつ時々本を作る「ネズミ男」。「アート」ではなく「フォーク(民芸)」により惹かれる。子供の頃、本を冷たい、怖いと感じていた彼が、偶然の装丁家のエピソードを通じ、本は本としてそれを取り巻く周辺も楽しんで欲しいとの結論。ギャラリーツアーでは多くの本を例に、背表紙の長さや様々な製本技法に至るまでのこだわりを詳しく紹介。
2019年06月16日
ワークショップ
京都dddギャラリー、恵文社一乗寺店 COTTAGE- 講師: 矢萩 多聞
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装丁にまつわる三つの工程をテーマにしたワークショップ。「編む 世界でひとつだけの写真絵本」では、街を歩きながら子供たちが撮った写真を持ち戻り、編集しつつ、じゃばら型の台紙にプリントして、デザインを行った。子供とは思えない独自の切り口と技巧に驚かされた。「綴じる 地球ではじめての本をつくろう」は、dddと恵文社一乗寺店Cottageで開催。全く新しい本のかたちを参加者たちが模索。思い出のショッピングバックでできた本、一枚の紙からできた折り畳み式の本、旅行パンフの写真でできた本、開くと階段状になる本など、力作ぞろい。「刷る デコボコ版画であそぼう」もCottageで開催。軍手や滑り止めマット等の廃材や身の回り品の数々が材料。様々な形状、質感を持った素材を切ったり貼ったりしてできた版を用いた版画印刷に、参加者は時間の経つのも忘れて没頭していた。
2019年06月17日
クロージングトーク
京都dddギャラリー学校の先生、劇団という経歴を持つ三浦氏。矢萩氏との出会いは、10年勤めた出版社が倒産し、自宅で春風社を始めて間もない1999年頃。まだ10代だった矢萩少年の母が営むインドやタイの輸入雑貨店での事だった。そこには本展タイトルにもある、まるで“縁側”のように心地よい場所で、三浦氏と矢萩少年は自然と話す様になる。装丁家矢萩多聞が今あるのは、三浦氏の「絵が描けるんだから装丁もやってみたら?」がきっかけ。本展の図録『本の縁側』に収録された約600冊の内、350冊程が春風社の仕事。晶文社の平野甲賀氏の様に、春風社が伸びることができたのは矢萩氏のおかげと語る。同社では、常に新しい装丁家に矢萩氏の特徴的な装丁作品を紹介している。様々な本に纏わるエピソードを通じて、本づくりとは、矛盾だらけの人間の“業”をも肯定するように、人間を感じる事ができる仕事だと締め括った。
会場写真
展示記録・撮影: 吉田 亮人