ラース・ミュラー氏が出版した書籍の中から自薦による100冊を、来場者が実際に手にすることが出来るように紹介。展示デザインは世界的に注目を集める建築家の藤本壮介氏。ガラス面開放によるワンフロアの広々とした空間に藤本氏によるシンプルな展示什器と北欧デザインのスツールを配し、長時間の読書にも適した快適な展示空間の演出となった。
ID
ddd_202
展覧会名
ラース・ミュラー 本 アナログリアリティー
開催期間
2015年04月10日–2015年05月30日
展覧会タイプ
dddからgggへの巡回展
会場
ddd太秦 (京都)
作家・団体
後援
展示デザイン
2015年04月10日
ギャラリートーク
京都dddギャラリーゲストは以前よりラース氏と親交があり、今回の展覧会の会場デザインも手がけた建築家の藤本壮介氏。ゆったりとテーブルが配置された展示会場でリラックスした雰囲気の中、トークが始まった。一冊の本を手にのせたラース氏、その手に感じる重さ、物理的なモノとしての本へのこだわりを静かに語った。あらゆるものがデジタル化される昨今、本がデジタルメディアに取って代わられると言われて久しいが、人々はモノとしての本の持つリアリティーや身体性を求め続けるだろうと言う。武蔵野美術大学の図書館などを設計した藤本氏も、リアルな本のある空間は何ものにも代えられないと語る。多くの本が並ぶ中を歩いていると、インターネットで検索するだけでは得られない、予期せぬ出会いや偶然の発見があると。コンテンツに合わせた編集や装丁などにも話は膨らみ、本というモノの持つ魅力がひしひしと伝わるトークとなった。
2015年04月09日
関連イベント 1:ラース・ミュラー特別講義「アナログリアリティー」
京都造形芸術大学佐藤淳教授より、1983 年のラースミュラー出版社は設立以来約800 冊の本を出版。デザイン、写真、芸術をはじめ、建築や社会問題まで帽広いテーマを取り扱ってきたと紹介。我々はアナログな人生を生きているが、モダニズムは人生の様々な課題の解決に取り組んできたことに触れる。スイスでは、1950~60 年代、モダンデザインの基準の確立に取り組んだ。そこで氏が初めて出版したのはグリッドデザインの本。氏の本作りの基本姿勢はグリッドデザインによるシャープでシンプルなデザイン。表紙で本の内容を写真で表現する事は極力避ける。これらを具体的にいくつかの事例により解説 最後に若いデザイナーに対して、「きちんと暮らし、あなたを取り巻く社会の仕組みを理解して行動すべし」というアドパイスで締め括った。
2015年04月17日
関連イベント 2:公開授業「ラース・ミュラーの本作り」
京都造形芸術大学佐藤淳教授は、同世代のラース氏にかねて親近感を感じていた。氏の出版のルールの1つはデザインのクオリティ。年200 冊の出版依頼から出版が実現するのはこく僅か。持参した本から数冊、書画カメラを通して紹介。レコードジャケット・デザインの「ECM」、建築とデザインをチューリッヒで学んだヨゼフ·ミューラー=ブロックマンの雑誌『ノイエ・グラフィック』(氏が復刻)、コンピュータデザインを予見したデザイン・ユニット「オクタボ」。バーゼル派のウォルフガング・ワインガルト。ハンス・ヒルマンの懐かしいデザイン。ルフトハンザのグラフィックデザイン。愛してやまないヘルベチカ書体に関する本たち。ラース出版で本を出した日本人、原研哉、三木健の2人も紹介。残り時間は学生が自由に本を手にする機会が与えられた。
会場写真
展示記録・撮影: 吉田 亮人